私は名古屋のバッグメーカーに生まれ、幼い頃から革製品に囲まれ、革の匂いが当たり前の中、毎日職人の仕事を見て育った。
当時はその風景が当たり前で、私が大人になった時も当たり前の風景だと思っていた。しかしここ数年で大きく変わってしまった。時代も変わり、仕事も変わり、働き方も目まぐるしく変わっていく。私が幼い頃に見続けてきた日常は、2021年現在においては、当たり前
ではなく、維持存続する事自体が難しくなってしまった。
昔から続くバッグメーカーは、現代の時代には合わず、職人の高齢化、後継者の問題などでやむをえず廃業し、バッグメーカーの技術と精神で支えてきた日本のものづくりが徐々に失われつつある。
そんな中、私が幼い頃から見続けてきたその風景を絶やさない事が、バッグメーカーに生まれた使命だと思っている。
もちろんそこには、あの懐かしい風景がとても居心地が良く、何より大好きな場所だったからこそそう思える。
バッグメーカーに生まれ、革に囲まれたモノを作る場所は、まさにわたしの家そのものである。そんな大切な場所をこれから先も残し続けていきたいと思い、2010年に有限会社ルックの自社ブランド「BORSACASA」を立ち上げた。
ブランド名は、イタリア語で「かばんの家」=「ボルサカーサ」と決めた。
名古屋に歴史あるバッグメーカーが存在する事を、これから先も自社ブランド「BORSACASA」を通じて、たくさんの人に知ってもらいたいと願っている。